薬局だより
ピロリ菌の除菌について
薬局 薬剤師 梶原 光太
今月はピロリ菌について紹介します。平成25年2月より、ピロリ菌感染のある慢性胃炎に対しても、除菌治療が保険適応されることとなりました。この保険制度の変更により、慢性胃炎による比較的軽度な症状に対しても除菌治療が可能となったため、最近の話題にもなっていました。
では、ピロリ菌とはどのような菌なのでしょうか?
●ピロリ菌とは?
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、ヒトの胃の粘膜に生息する菌で、胃や十二指腸の病気の原因となります。胃の中には食物の消化を助ける胃酸があるため、通常の細菌は生息できません。しかし、ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素を出すことで、胃の中の尿素をアンモニアに分解し、胃酸を中和するため、胃の中でも生き延びることができます。
ピロリ菌に感染したからといって、全ての人に症状が現れるわけではありません。しかし、発生したアンモニアによって胃内が傷つけられたり、生体の防御反応による胃の粘膜の炎症が長期にわたり続くと、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの病気につながることがあります。
●ピロリ菌にはどうやって感染するの?
ピロリ菌は飲み物や食べ物を通して、口から感染すると言われています。また、胃の酸性が弱い幼児期に感染することが多く、成人以降に感染しても急性胃炎を発症するのみで、胃に定着することはほとんどないようです。
口から感染するということは、キスやコップの共有などでも感染するのでは?と思うかもしれませんが、唾液による感染の心配はありません。しかし、親が食べ物を噛み砕き、子供へ与えるような行為では感染する可能性がありますので、注意が必要です。
●ピロリ菌の除菌はどうするの?
ピロリ菌に感染している場合は、除菌のために薬の内服を開始します。除菌には2種類の抗菌薬と1種類の胃酸分泌抑制薬を1日2回、7日間服用します。1回の除菌でおよそ80%の人が除菌に成功しますが、除菌できなかった場合は抗菌薬を1種類変更し、再度7日間内服します。これで95%以上の人が除菌に成功します。除菌後は、元々の病気の治療を継続します。
除菌療法の主な副作用は、軟便や下痢、味覚障害などがあります。これらの多くは2、3日でおさまります。
*当院では、ピロリ菌の除菌治療外来を行っております。除菌ご希望の方は、外来でご相談ください。