脳ドックについて ~脳も血管とともに老化します~
院長 松島 忠夫
当院での脳ドックは、始めてから20数年になります。当初は0.5T※1のMRIで検査をしていましたが、現在は1.5TのMRIで検査をしています。1.5TのMRIになり、精度はかなり向上しました。日本脳ドック学会というものがあり、当院の脳ドックも学会基準に則った検査内容で行っています(当院は日本脳ドック学会認定施設※2です)。当院では年間に1,500人前後の方が検査を受けています。内容は、脳の連続スライスの脳断面で脳内異常の確認、そして脳内血管、頚部の血管検査になります。脳ドックでは通常、造影剤などは使わずに検査をします。検査で見つけられる異常は、未破裂脳動脈瘤、無症候性脳梗塞、無症候性陳旧性微小出血、血管狭窄、無症候性脳腫瘍が主なものです。これらは年齢とともに見つけられる頻度が増加する傾向にあります。脳動脈瘤は大きいものは見逃す可能性はまずありませんが、小さいもの(2mm~3mm前後)は判断に困ることもあります。脳血流をコンピューター処理で画像にするもので、血管の折れ曲がりや小血管の分岐部が動脈瘤様にみえることがあるためです。上記の異常が見つかった際は、脳神経外科専門医が説明を行い、指導や治療を行います。
脳断面画像、血管画像を見ていると画像上の脳の老化の程度が推定されます。数字で老化段階を示すのは難しいですが、80歳前後の方の脳の断面と血管画像が若い人と同様な所見を示すことが時にあります。その年齢までの過ごし方や日常気をつけてきたことが想像されます。画像上の老化の程度は個人差が非常に大きいのですが、50代を過ぎてくると、その差が出てくるようです。これは、年配の方の顔の表情や見た感じの若さに通ずるものがあるように思います。
MRIで老化の程度は、脳実質の変化(白質変化)、血管の蛇行延長の程度、無症候性の梗塞や微小出血の有無、血管壁の不正や狭窄の有無などで判断されます。若い世代に目立つ変化や異常があれば、生活習慣の見直し(喫煙、飲酒、運動習慣、肥満など)や健診で指摘された高血圧、高脂血症、高尿酸血症、糖異常等(いずれも動脈硬化症の危険因子)に対する指導、治療が必要です。脳も血管とともに老化していきます。実際に脳卒中になったら大変です。軽くすんでも後遺症で日常生活や仕事面で支障になる場合もあります。中高年では、脳ドックが脳を守るための一役になるでしょう。
※1 T(テスラ)は、磁力の強さを表す数字(静磁場強度)の単位。1.5T機は0.5T機と比較して、半分以下の検査時間で4倍以上細かい画像を得ることができるといわれている。
※2 脳ドックの質の向上を目的とし、脳疾患の予防と早期発見を一定水準かつ有効に行うことのできる施設を日本脳ドック学会が認定するもの。当院は平成23年4月に認定。