認定看護師コラム
認知症で起こる行動・心理症状とその対応方法①~妄想~
認知症看護認定看護師 細矢 愛実
認知症は脳の病気でありその症状は記憶の障害などの中核症状と、その中核症状が要因となって起こる、行動・心理症状に分けられることを前回(平成29年11月号)お伝えしました。今回は、介護する人を悩ませる行動・心理症状とその対応方法についてお伝えします。
認知症又は認知症が疑われる方、そして認知症の症状が全くない方でも“近所の人が意地悪をする”“浮気をしている”などの発言が聞かれる方がいらっしゃいます。この妄想の背景にあるのは、孤独感や、自分自身の身体・心理的な老化に気持ちがついていけなくなる事が要因のひとつであると言われています。身近な方、献身的に介護をしている家族の方が妄想の対象になる事も多く、周囲の方にとっては辛く、悲しい状況です。妄想への対応方法ですが一番大事なことは、【妄想を否定しない】という事です。妄想は、訴えているご本人にとっては現実世界の出来事となっています。それを否定されることは本人の生きている世界を否定することに等しく、ますます孤独感や心理的な苦痛を感じ、更に妄想を悪化させていきます。そして【感情に焦点をあてる】ことが重要です。“近所の人が意地悪をする”という妄想は、近所の人との関係性が認知機能障害によってうまく築けなくなってきた可能性があります。その寂しさが背景にある可能性が考えらます。また“浮気をする”というのは、相手のことをそれだけ想っているということです。その気持ちを汲み取るように心がけてみてください。
妄想への対応は認知症介護の中でも最も難しいことです。上記の対応でも上手くいかないことがたくさんあります。大事なことは上手くいかないからといって介護する方が自分自身を責めないことです。認知症の介護は十人十色。1人で抱え込まず周囲に相談しながら対応していきましょう。