認定看護師コラム
認知症で起こる行動・心理症状とその対応②~徘徊~
認知症看護認定看護師 細矢 愛実
今回は、徘徊についてお伝えします。
徘徊というのは、援助者にとっては悩ましい症状のひとつだと思われます。しかし、認知症者本人にとっては、目的を持った行動なのです。徘徊は、記憶障害や見当識障害が影響して起こります。
記憶障害によって、本来果たすべき目的が何だったのかを忘れてしまう、道順を忘れてしまう、などがあります。また、時の見当識が障害されると、認知症者にとっての“いま”が、現在と過去が混同したり、過去の記憶を現在のことのように認識し、それに基づいて行動を起こすことがあります。例えば、自宅を家と認識できず、実家を自宅と認識してそこに帰ろうとして行動を起こす事があります。また、環境に対する不快感・不満感が募ると徘徊に繋がることもあります。
徘徊が見られる時の対応としては、【本人の目的を探る】ことが必要です。目的を達成することが出来れば徘徊症状は落ち着いてくることが予測されます。また【環境を見直す】ことも必要です。
認知症者は環境変化にとても弱いという一面があります。例えば、自宅の隣で工事が始まった事による騒音が不快で徘徊に繋がる方もいらっしゃいます。徘徊が出始めた時は環境変化がないか、探ってみて下さい。また、【身体的不調の可能性を探る】ことも必要です。行動・心理症状(BPSD)は身体的不調の前兆として出現する場合があります。認知症者は自分の状況を適切に言葉で表現することはできません。援助者が汲み取ってあげることが必要です。そして、【社会支援を活用する】ことで事故を予防しましょう。最近は徘徊高齢者見守りシステムなどのサービスがあります。ぜひ、これらを活用して緊急事態への備えをしておきましょう。認知症の介護は十人十色。1人で抱え込まず周囲に相談しながら対応していきましょう。