「いつの間にか骨折」って知っていますか?~骨粗鬆症を治療して健康寿命を延ばしましょう~
整形外科 猪股 洋平
「腰が曲がってきたなあ」「背が縮んできたなあ」と思うことはありませんか?それもしかしたら。「いつの間にか骨折」かもしれません。
「いつの間にか骨折」とは転んだ覚えもないし、背中も痛くないのに、病院でレントゲン検査を受けたら背骨が潰れていた(折れていた)という骨折です。医学的には脊椎圧迫骨折と呼びます。
これは骨粗鬆症という骨が脆くなる病気が原因で、軽微な衝撃で背骨が潰れてしまった状態です。ここでいう軽微な衝撃とは、くしゃみや咳、尻餅、重いものを持ち上げる、身体を捻るといった動作でおこります。どうでしょう、皆さん?思ったより日常的な動作で骨折をしてしまうのだなあと思いませんか?
痛くないなら大丈夫かも? と思われるかもしれません。ではこの骨折を気づかないで放置しているとどうなるのでしょうか。一度潰れた骨は戻ることはありません。そして、ほかの背骨の骨折に繋がったり(ドミノ骨折)、背骨がつぶれつづけてさらに腰が曲がってひどい腰痛に悩まされるようになったりします。 ひどい時には背骨を通る神経(脊髄)を圧迫して足の痛みやしびれ、麻痺などの症状が出て手術が必要になることもあります。脊椎圧迫骨折は介護が必要となってしまう病気の原因となるのです。
これらを予防するためにも整形外科で早めに相談して骨折を見つけたり、骨折をする前に骨粗鬆症の治療を始めたりしていくことが重要です。
当院では骨粗鬆症を発見するための骨密度検査機器が導入されています。骨粗鬆症治療も行っています。骨粗鬆症の治療薬には様々なものがありますが、そのうち当院で力を入れて行っている治療には患者さん自身がご自宅で注射をするものがあります。これはPTH製剤と呼ばれ、日本で使用できるもののうち、数少ない骨をつくる力を強めてくれるお薬です。 またPTH製剤は脊椎圧迫骨折による腰痛をやわらげてくれる作用もあり、骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折の治療薬では重要なお薬といえます。
骨粗鬆症のお薬には、ほかにも数多くのお薬があります。PTH製剤を含めて、どのようなものが患者さんに適しているか、整形外科の医師と相談しながら一緒に治療していきましょう。人生100年といわれる今の時代、骨粗鬆症治療で骨をつよくして、健康寿命を延ばして元気な人生をおくっていきましょう。