動脈硬化症と生活習慣病の関係について
脳神経外科医長 窪田 圭一
動脈硬化症という言葉を耳にされた事がない方は少ないと思います。血管内腔にコレステロールが沈着する事で内腔が狭くなり血流が悪くなってしまう、血管壁のしなやかさが失われ脆くなる事で破綻しやすくなってしまうというのが動脈硬化症の正体です。 血管の老化現象と考えていただければ良いのですが、私たちも歳を重ねるにつれ、皮膚の皺が目立ち白髪が増えるなどの老化による変化が見られてきますが、血管にも同様の老化に伴った変化が生じます。日本人の死亡原因で常に上位を占めている脳卒中、虚血性心疾患の発症と動脈硬化症は密接な因果関係がある事が指摘されております。 年齢と共にある程度の動脈硬化性変化が生じてきてしまう事は仕方のない事ではあるのですが、年齢以外にも動脈硬化症を進行させる危険因子がいくつか指摘されており注意が必要です。
生活習慣病とは、偏った食生活、運動不足、嗜好品、生活習慣が原因で発症する疾患の事で、代表的なものとしましては、高血圧症、脂質異常症、糖尿病などが上げられますが、これらの生活習慣病は動脈硬化症の危険因子とされており、動脈硬化症を早めてしまう詳細なメカニズムも解明されております。 生活習慣病をしっかり管理する事は、脳卒中、虚血性心疾患などの動脈硬化症を背景として発症する疾病予防に直結します。
私の外来に通院されている方々は過去に脳卒中で内科、外科治療の介入が必要になった方が多く、上記に上げた生活習慣病を複数持つ方が少なくありません。薬物療法以外に食事、運動などの生活習慣を改める事でかなりの成果を上げている方もおられますが、努力が結果にあまり反映されていない方も少なからず見受けられます。 特に高血圧症、脂質異常症、糖尿病は生活習慣を改めることでかなりの改善が期待出来ますので、正しい知識・方法を身につけ日々の生活に取り入れる事がとても大切です。
“青魚を食べる”、“野菜・果物を多く摂取する”、“オリーブ油は体に良い”、“塩分・糖分を控える”、“適度に体を動かす”などは誰もが一度は耳にした事がある健康を維持する為のキーワードですが、どのように日常生活に反映させれば効果が期待できるのかという事について説明できる方は非常に少ないのではないでしょうか。 断片的に正しい知識が得られていても、正しい方法で日々の生活に生かす事が出来ていなければ効果は薄いものとなります。
そこで動脈硬化症の危険因子とされる生活習慣病をお持ちの方に是非お勧めしたいのが、書店などで一般の方向けに販売されている生活習慣病に関する書籍を購入していただき、個人で積極的に知識を深めていただく事です。内容はとても分かりやすく、殆どが1000円前後で購入でき、効果が期待できる具体的な方法などが詳しく記載されております。 短期間で効果は得られませんが、日々の努力の結果が健康診断や外来での定期的な血液検査、人間ドックで確認出来れば更なる動機付けに繋がりますし、内服薬の減量や中止が可能となれば経済的な負担の軽減も実現され、何より脳卒中や虚血性心疾患発症などの動脈硬化症を背景として発症する疾患の危険性を軽減させることが可能となります。