薬剤科 薬剤師 熊谷 未菜
感染症にかかった場合に処方されることが多い薬の一つに抗生剤(抗菌薬、抗生物質)があります。抗生剤は細菌と戦う薬です。病院や薬局で「抗生剤は飲み切ってくださいね」と言われたことはありませんか?今回は、抗生剤を飲み切らなければいけない理由についてお話しします。
「症状が治まったら、もう飲まなくてもいいのでは?」「よくなってもまだ飲むの?」と思われるかもしれません。たとえ症状が良くなったとしても、体の中には原因となった細菌が残っている可能性があり、ここで抗生剤をやめてしまうと、再び症状がでてきてしまう可能性があります。
細菌を完全に退治するために、処方された抗生剤は飲み切りましょう。ただし、発疹がでたり、ひどい下痢が続く場合は、服用を中止し、病院を受診しましょう。
「薬を飲む期間はなるべく短いほうがよいのではないか」と思う方もいらっしゃるかもしれません。大切なのは、抗生剤を飲む期間の長さではなく、処方された期間きちんと飲むことです。抗生剤を必要とする期間は原因によって大きく異なり、月や年の単位で抗生剤を飲む必要がある場合もあるのです。
また、途中で飲むのをやめたり、指示された量や回数を変更したり、不適切・不十分な飲み方をすると、抗生剤が効かない細菌(薬剤耐性菌)が生まれてしまうことがあります。抗生剤を正しく飲まないと、薬剤耐性菌が増えて、感染症の治療や手術の際に抗生剤が効かなくなることがあります。
同じ理由で処方された抗生剤をとっておいて後で飲んだり、他の人に処方された抗菌薬をもらって飲んだりしてはいけません。