大腸がんの話
消化器外科科長 三井 一浩
大腸は“うんち”を作る消化管最終消化工場で約2mの腸です。結腸・直腸・肛門で構成されます。結腸は盲腸 ― 上行結腸 ― 横行結腸 ― 下行結腸 ― S状結腸と部位により名称を変え、体の右から左に便を運び直腸 ― 肛門に達します。
さて、この大腸に発生する癌が大腸がんです。日本人はS状結腸と直腸にがんができやすいと言われています。近年、大腸がんの罹患率は上昇傾向にあります。食物の欧米化などが原因とされ、2011年のがん罹患率をみると大腸がんは男性4位、女性2位であり、2015年のがん統計予測では、大腸がんの年間罹患数は13.5万人(第1位)になると言われています。
大腸がんにはポリープや腺腫といった良性腫瘍ががん化する場合と大腸粘膜から直接発生する場合があります。がんは確実に成長し、進行して大きな腫瘍となり、さらにリンパ節や肝臓・肺などの別の臓器に転移していきます。
大腸がんの発見には健診等による便潜血検査が有用で早期に発見できれば内視鏡治療だけで完全に治す(根治)ことも可能です。大腸がんによる症状としては、血便や下血、排便異常、便が細くなった、お腹が張る、貧血や体重減少などがあります。血便を“痔かな?”と片付けてしまうのは危険なことがあります。気になることがあれば、当院の消化器科か外科を受診して下さい。
大腸がんの治療の原則は完全切除です。大腸がんは根治が可能ながんでもあります。当院では、大腸がんの大半の患者さんは腹腔鏡手術で根治切除をしています。お腹に4-5カ所の5~12mm 程度の穴をあけて手術をしています。腹腔鏡手術は術後の回復が早く、お腹にも体にも優しい治療法です。現在腹腔鏡手術は大腸がんの標準的治療の一つとなっています。
進行がんの場合、根治切除ができても運悪く、再発することがあります。しかし、10年程前から進行・再発大腸がんに対して非常に制がん効果の高い抗がん剤が作られました。これにより大腸がんの生存率は飛躍的に向上し、予後が改善されました。最近は抗がん剤に分子標的治療※薬を組み併せて、さらなる予後改善が得られています。
“がん”は治す時代から“治る”時代になってきました。まずは皆さん、健診を受けましょう。何か心配なことがあれば、いつでも我々のところに来て下さい。遠慮はいりません。健康で長生きをするために。
※ 分子標的治療:癌に関与する遺伝子や遺伝子産物を標的とした新しい薬剤による治療法。