多剤耐性菌(アシネトバクター)について
臨床検査科 技師長 大畑 健
近年、多剤耐性菌が増加しています。近頃、ニュースなどで「多剤耐性菌(アシネトバクター)」という言葉を聞いたことがあるかと思います。多剤耐性菌とは、細菌のうち、変異して多くの抗生剤が効かなくなった細菌のことで、1970年代以降MRSA※が広がっており、2000年代に入って、多剤耐性結核菌など、さまざまなものが全国に広がりつつあります。
感染経路は手などについた細菌が、何かのきっかけで、口などから入って感染します。感染力や病気をおこす力は、耐性菌ではない細菌と同じで、一般的には健康な方の体の中に入ったり、皮膚や粘膜の表面についたりするだけでは、すぐに病気になるわけではありません。しかし、体の抵抗力が落ちているときなどは、多剤耐性菌による感染症にかかることがあり、この場合、抗生剤が効かないため、治療が難しくなります。
感染しているのか心配な時は、症状がなければ検査する必要はありませんが、体調が悪い時は、早めに医療機関を受診し、必要な検査を受けて正しく診断をしてもらい、適切な治療を受けることが重要です。感染症にかかった人が、過去に飲み忘れて保管してあった抗生剤などを自分の判断で飲むことは、多剤耐性菌を増やしてしまうことがあるので、とても危険です。
患者さんのかかっている多剤耐性菌による感染症が、ご家族の方にうつることは、ほとんどありませんが、例えば、手に付いた菌が口に入ってしまう場合などに、多剤耐性菌に感染することがあるので、患者さんに接触した後の手洗いはきちんとすることが大事です。特に、トイレを使用した後はきちんと手を洗ってください。
以上のことを守って、感染症にかからないように気をつけましょう。
※黄色ブドウ球菌が耐性化した病原菌であり、黄色ブドウ球菌と同様に常在菌のひとつと考えられ、健康な人の鼻腔、咽頭、皮膚などから検出されることがある。