くも膜下出血と脳動脈瘤(2)
脳神経外科部長 脳卒中センター長 西村 真実
二月号ではくも膜下出血と脳動脈瘤について解説しました。今回は治療法についてご説明します。
くも膜下出血の治療法
緊急入院の後、頭部CTにてくも膜下出血の診断がつきます。原因である脳動脈瘤については、入院当日あるいは翌日に、カテーテルによる脳血管撮影または造影3DCTAを行い、確定診断します。
当院では、患者さんの年齢、全身状態(合併症など)、脳動脈瘤の部位・大きさ・形状等を十分に考慮し、脳神経外科チーム内で協議のもと再出血予防のための治療法を決定しております。
①開頭クリッピング手術
全身麻酔を行い、頭蓋骨を開け、顕微鏡下に脳動脈瘤の頚部をクリッピングします。
②カテーテル治療
全身麻酔あるいは局所麻酔下に、大腿部よりカテーテルを留置し、さらマイクロカテーテルを動脈瘤まで送り込み、瘤内にプラチナコイルを充填していきます。
③バイパス術を併用した治療や協同治療
治療困難な大型動脈瘤に対して当院では、バイパス術を併用した根治術や開頭手術と血管内治療を組み合わせた治療なども積極的に行っております。
治療後
くも膜下出血の1~2割は即死するといわれ、病院に搬送されても治療中に死亡することもあり、非常に怖い病気です。しかし、出血量が軽度から中等度で、①再出血予防の動脈瘤の治療、②脳のむくみ、③脳血管れん縮(発症から4~14日に脳の血管が縮んでくる病態)、④水頭症(発症から1~2ヶ月で脳室が拡大してくる病態)などの時期を適確な治療で乗り越えれば、再発やその後の悪化の恐れはありません。安心して社会復帰や家庭内へ戻ることができます。したがって、発症してから特に初めの1ヶ月を医療チームのキメの細かい治療と患者さんと家族の協力で集中治療していく必要があります。
おわりに
くも膜下出血の疑いがあれば、まずは慌てないことですが、その後は一刻も早く脳神経外科専門医が診察することが重要です。救急車を呼び脳神経外科のある救急病院へ搬送してもらえるようにしてください。当院では24時間体制で搬入を受け入れております。また脳検診も積極的に行っておりますので、受診していただければ外来にて説明をさせていただき、破裂予防の治療計画が可能です。いつでもご相談ください。