がんは個別化医療の時代へ でも、最も大切なのは早期発見!
脳神経外科顧問 片倉 隆一
日本人の2人に1人はがんに罹患し、3人に1人はがんで亡くなる時代になりました。今、がんの治療法の決め方に変化が起ころうとしています。例えば、肺がんの患者さんの治療法を決めるには、これまでは肺がんの組織を調べ病理所見すなわちがん細胞の形態上の特徴をもとに分類し、その組織診断結果に基づき治療法が決まります。この時の治療法は、信頼度が高い比較試験において最も効果の高い治療法として最新のガイドライン等に示されているものになります。例えば肺がんで組織診断が腺癌と分かると、同じ腺癌の患者さんは押しなべてガイドラインにある治療法を受けることになります。ところが最近、従来の形態学上の特徴で決めるのではなく、患者さんそれぞれのがん組織の特徴を遺伝子レベルで細かく分類し、その遺伝子上の特徴で、患者さん一人ひとりにあった治療法を見つけていこうとする時代になってきました。いわゆる個別化医療の世界に大きく踏み込む時代になってきたのです。現在、がんの発生・増殖・転移そして治療効果などがんの特徴を表現するがん遺伝子は200以上見つかっております。患者さんから摘出されたがん組織を、大型解析機を用いこれらの遺伝子発現の有無等を調べその結果で治療法を決定します。まさに、患者さん一人ひとりに合った治療が選択されることになります。ただ、現在はこの遺伝子学的な分類はできても、それに合う薬剤の開発が進んでおらず、使用できる治療薬は限られています。新薬の開発が急がれるのですが、新薬誕生までは時間と膨大な費用が必要で、思うような治療ができるようになるにはまだまだ時間がかかります。
このように個別化医療の世界が進んでいきますが、この治療法でがんが治癒するのかといいますと、現時点では生存期間の延長は見込めても「みな治る」とは言えません。がんを治す・治癒させるためには、現在も将来も「がんの早期発見」が不可欠です。そしてがんの早期発見には、がん検診を定期的に受けることが重要です。その検診も、従来の腫瘍マーカー・超音波検査・X線撮影・内視鏡検査などに加え、PET検査を取り入れることで精度が高まりますので、PETを含めたがん検診をお薦めします。