薬局だより
上部消化管炎症に使用するお薬について
薬局 薬剤師 小林 正人
今回は上部消化管炎症に使用するお薬のお話です。上部消化管とは主に食道や胃のことを言います。代表的な炎症の種類と、その治療薬について触れたいと思います。
●炎症の種類と特徴
代表的な2つの消化管炎症について
●逆流性食道炎(食道に胃酸が逆流して食道の粘膜を傷つけることで起こる炎症です。)
※欧米と比べると日本人には少ない病気でしたが、日本人にも最近急激に増えています。
【特 徴】
横になったときや、かがんだときに胸焼けを感じるなど、胸の下の痛みや食道がつかえる感じの症状があります。
*原因は大きく3つに分けられます。
1.胃酸の増加
2.食道を締めて、胃の内容物が逆流しないように働いている筋肉が、様々な原因で機能低下する。また、食道の運動機能が落ちて、逆流したものを胃に戻せなくなる。
3.ピロリ菌の除菌後、一時的に起こりやすくなる。なぜなら、筋肉をコントロールしている神経の働きが乱れる為と言われています。
●急性胃炎(急性胃炎を繰り返していると、慢性胃炎になる恐れがあります)

【特 徴】
胃のあたりに不快感や痛みなどがあり、胃のむかつきや嘔吐もあります。(時には吐血することも)
*原因としては、大きく分けて、暴飲暴食やストレスなどの刺激によるものと、感染症やアレルギーなど体の中からのものが上げられます。
○刺激によるものとは・・・。
・アルコール、コーヒー、香辛料、冷たいもの、熱いものなど刺激物の過量摂取
・薬(アスピリンや抗生物質、非ステロイド性抗炎症剤、副腎皮質ステロイド剤など)の副作用
・ストレス、タバコの吸いすぎ、不規則な生活など
○体の中からのものとは・・・。
・消化器の病気以外の感染症(風邪やインフルエンザなど)
●治療薬について
上の2つの消化管炎症には、主にH2ブロッカーやPPI(プロトンポンプ阻害薬)と言われる、胃酸の分泌を抑えるお薬が使われます。
【2つのお薬の特徴】
H2ブロッカー・・・胃粘膜の壁細胞に存在し、胃酸分泌を調節しているH2受容体(お薬の受け皿)に直接作用して、過剰な胃酸分泌を抑えます。処方箋が必要な医療用医薬品として用いられていましたが、1997年から市販薬(ガスター10(テン)®など)として薬局でも買えるようになりました。
PPI・・・胃酸の分泌の最終段階で、プロトンポンプというしくみを抑制することによって、胃酸の過剰な分泌を抑えます。
※お薬の効き目や飲み方は、薬の種類や人によって様々です。迷ったときや、分からないときは、決して自分で判断せずに、主治医の先生や薬剤師に相談するようにしましょう。