入浴関連死を防止しよう!
副院長・救急センター所長 赤間 洋一
入浴関連死は全国で年間17,000人も発生しており、この数字は交通事故死の年間件数4,400人と比べ大幅に上回ります。しかし、現在、市民に対して注意喚起や予防策などのメッセージはほとんどなされておりません。
そこで今回、当地域(岩沼・名取・亘理・山元)において過去5年間に発生した入浴関連死について調査分析し、その予防策について検討しました。その結果、入浴中の死亡件数は107件で年間20件以上発生しておりました。性別では男性60名、女性47名で、年齢は65歳以上の高齢者が92%を占めました。発生場所は浴槽内(水没型)が70%以上みられました。月別でみますと12月および1月に多く、次いで寒暖差が大きい3月に発生しておりました(図)。死亡例の既往歴をみますと循環器系疾患が28%と多く、次いで脳疾患(12%)、糖尿病(11%)、精神疾患(6%)などでした。また、飲酒での入浴も少なからずみられました。
今回の調査結果より、入浴事故は冬期に集中して発生しており、脱衣所と浴室の温度差が大きいのが一因と思われました。したがって、脱衣所に温風機を設置し、環境温の変動を少なくするなどの工夫が必要と思われます。特に、循環器系疾患や脳疾患を有する高齢者の居るご家庭ではご注意ください。
また、浴槽内の水没型が多いことから、“肩までお湯に浸かる”日本特有の習慣の影響も考えられます。肩まで浸かるのではなく、胸元以下の半身浴が奨められます。半身浴でも血液は循環しておりますので、十分温まります。その対策として、浴槽の内側に目立つ色のテープで線を引き、お湯の水位を従来の3割程度減らしてはいかがでしょうか。これを全家庭で実施されれば、入浴関連死の予防になると同時に、節水・省エネにもなると思います。
さらに、飲酒時の入浴は避け、『孫と一緒の入浴』も奨められます。