ワンポイントリハビリ
杖の種類と選び方について
リハビリテーション科 理学療法士 高橋 奈津子
加齢や病気により体力が低下し、歩行が不安定になることがあります。
そんな時に活躍するものの一つに杖があります。今回は杖の種類や選び方についてご紹介したいと思います。
●杖を使用する主な目的
①安定した立位がとれる ②歩行機能の改善・向上 ③転倒予防 ④膝や腰への負担軽減 等が挙げられます。
●杖の種類と特徴
腕に力があるが歩行に不安がある人
T字杖
・歩行に不安があり、階段や坂道でも安心して歩きたい方が対象。
・長さを調節できるタイプや、折り畳みできるタイプがある。
握力や腕の力が弱い人
ロフストランド杖
・T字杖より安定性がある。カフ(腕を通す部分)とグリップ(握る部分)で体重を支える。握力や腕の力が弱い方、麻痺がある方に適している。
・カフはO字型(安定性は良いが、腕から取り外しにくい)、U字型(腕にはめやすいが、安定性にかける)がある。
歩行が不安定な人
多点杖(3点杖・4点杖)
・T字杖よりも杖先の接地面が広いため、安定性が高い。
・足の力が弱く、立位姿勢が悪い方や背中が丸い方等に適している。
・脚部が狭いスモールベースと広いラージベースがあり、広いほど安定性が高い。
・グリップと脚部の中間部分にもう一つグリップ(握る部分)があるタイプは、座った状態から立ち上がる際に補助する機能があり、主に室内用として活用できる。
・段差のない平地では安定感があるが、階段や凹凸がある場所では不向きである。
●転倒する前に
転倒は、視力や筋力の衰え等の身体機能の低下や、段差などの環境だけが原因ではなく、些細な不注意でも起きてしまいます。 周りの目が気になったり、歩けているから今は大丈夫だと思う方も少なくないと思いますが、万が一に備え、転倒予防のために杖を使用するという意識を持つようにして前向きに考えていきましょう。
●日頃から注意すること
・杖先のゴムのすり減りや、小石が挟まっている等の安定感がない状態に気づかずに使用していると、滑って転倒につながることがあるため、定期的にがたつきがないかを確認しましょう。
・杖を持つ手に力が入りすぎている場合は、体の状態に合っていない可能性も考えられます。
・杖をついた時に、普段よりもカチャカチャと音がする際は、固定しているネジが緩んでいる可能性があります。
上記に該当する場合や心配な点がありましたら、いつでも福祉用具の専門業者やリハビリスタッフまでご相談下さい。
【参考文献】「移動補助具」金原出版株式会社 松澤 正