「むずむず脚症候群」を知っていますか?
脳神経内科医長 四條 友望
冗談のような病名だと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、れっきとした正式名称です。「下肢静止不能症候群」「レストレスレッグス(restless legs)症候群」と呼ばれることもあります。 典型的な症状として、脚がむずむずする、皮膚に何もないのに脚が痛がゆい、脚に虫が這っているような不快感がありじっとしていられない、などがあります。特に夕方から夜にかけて症状が強くなり、不眠の原因となることもあります。 日本では人口の2〜4%にあたる200万〜400万人の患者さんがいると推定されておりますが、認知度の低さからなかなか病院受診まで至っていないのが実情です。
むずむず脚症候群が引き起こされるメカニズムは、実はまだよくわかっていません。有力な仮説として、中枢神経内の神経伝達物質のひとつである「ドーパミン」の機能障害が関与していると言われています。 脳内の「ドーパミン」が欠乏する代表的な病気にパーキンソン病がありますが、むずむず脚症候群をもっている方ではもっていない方に比べて、パーキンソン病の発症リスクが2.57倍であったという報告もあります。 他の仮説として、鉄代謝との関連も言われています。むずむず脚症候群の患者さんの中に貧血が隠れていることがあります。検診で測る貧血の数値(ヘモグロビン)が正常でも、潜在性の鉄欠乏によりむずむず脚症候群を発症することが知られています。 また妊娠や糖尿病などが原因となることもありますが、少し怖い話をすると、悪性腫瘍(がん)や脊髄の腫瘍が稀に引き金となってむずむず脚症候群を引き起こすこともあります。
治療は原因にもよりますが、二次的なむずむず脚症候群の場合、まずそちらに対する治療を行います。具体的には鉄欠乏があれば鉄剤の補充を行い、糖尿病がみつかれば糖尿病の治療を優先します。 原因が不明である場合や治療効果が不十分な場合には、少量の抗パーキンソン病薬や抗てんかん薬を飲んでいただくことで症状の改善が期待できます。
むずむず脚症候群の症状だけで脳神経内科を受診することは少しハードルが高いかもしれませんが、症状を改善できる薬が複数ありますし、別の病気が隠れている可能性もあります。 もし脚がむずむずして夜寝られないという症状でお悩みの方がいらっしゃいましたら、ぜひ脳神経内科を受診してみてください。