新型コロナウイルスの検査について
臨床検査科主任 佐藤 正高
当院では新型コロナウイルス感染症の検査は行っておりません。感染が疑われる場合は、厚生労働省より示されている相談・受診の目安を確認したうえで、最寄りの帰国者・接触者相談センターへご連絡をお願いします。
新型コロナウイルスに関するニュースで、PCR検査という言葉をよく聞きます。新型コロナウイルスの検査で用いられる、PCR検査と抗体検査について説明します。
■PCR法を用いた検査と検査キット(抗体検査)の違い
PCR検査では、鼻咽頭ぬぐい液や気道の奥から排出される痰を検査します。抗体検査は、抗体が血液中に存在するため、血液を採取して検査します。
PCR検査は抗体検査より精度は良いですが、偽陽性(感染していないのに陽性と判定される)、偽陰性(感染しているのに陰性と判定される)があります。偽陽性や偽陰性が起こる原因は、使用する試薬や機材の精度や人為的なものなど様々なことが考えられます。偽陰性の原因の一つとして、検体の採取方法や採取した検体に含まれるウイルスの量などが考えられます。
PCR法を用いた検査 | 検査キット(抗体検査) | |
---|---|---|
目的・特徴 | 現在、ウイルスが体内に存在しているのかを調べる。 | 過去に感染したことがあるのかを調べることが出来る。 |
採取方法 | 鼻の奥から、鼻咽頭ぬぐい液を採取 | 採血 |
検体採取者 | 正確な位置から検体を採取する必要があるため、専門家(医療従事者)が実施する。 | 多くの検査キット同様、自己採取も可能。 |
結果が出るまでの時間 | 数時間は要する | 10~20分程度 |
精度 | 良い | PCR法を用いた検査よりは低い |
■「PCR検査」とは?
「PCR検査」のPCRはPolymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の頭文字をとったもので、微量のDNA断片を増幅して検出する方法です。DNA(デオキシリボ核酸)とRNA(リボ核酸)は、「核酸」と呼ばれ、核酸にはウイルスの遺伝子が含まれています。つまり、ウイルスの増殖に必要な設計図のようなものが含まれています。コロナウイルスはRNAウイルスに分類されるため、RNAの有無を確認することになります。
RNAは非常に小さな物質であるため、その存在を確認するにはある程度の量が必要となります。そのため、量を増やす工程である「増幅」を行います。
この増幅工程に時間がかかるため、検査結果が判明するまでに数時間要します。
DNA、RNAを持つウイルスの代表的なもの
DNAウイルス
ヘルペスウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、B型肝炎ウイルスなど
RNAウイルス
インフルエンザウイルス、ノロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)など
一方、抗体検査は10~20分程度で結果が判明します。
抗体検査で調べる「抗体」は、ウイルスが体内に侵入した際に、体内で作られる物質です。ウイルス侵入の初期に出現するIgM抗体は、他の物質とともにウイルスを中和します。その後、IgG抗体が出現します。IgG抗体はその異物に対して長期的な免疫を提供する役割を持ちます。
PCR検査は、どの施設の誰でもが実施できるわけではないこと、精度が良いと言われるPCR検査でも、その精度が7割程度に過ぎないことを知っておく必要があります。